2020年6月28日 求める者を見捨てず

御名を知る者はあなたに拠り頼みます。主よ。あなたを求める者をあなたは

お見捨てになりませんでした。 詩篇9篇10節(1~20節)

《栄枯盛衰の歴史の中で》先の8篇は、天空の月や星々の壮大な創造の御業に比して、その中のチリにも劣る

人間の卑小さを、「人とは、何者なのでしょう。

あなたがこれを心に留められるとは。人の子とは、何者なのでしょう。

あなたがこれを顧みられるとは」(8:4)と歌っているが、9篇は、「あなたは国々を叱り

 悪しき者を滅ぼし 彼らの名をとこしえに消し去られました。 敵は絶え果てました。

──永遠の廃墟 あなたが根こそぎにされた町々──彼らの記憶さえ消え失せました。」(5~6節)と、

大国の栄枯盛衰の大河の流れの中で湧いては消える泡の一粒のような人間の、儚(はかな)さ、

脆弱さを覚えて歌っている。

歴史の展開は、大国の力によるものではなく、万物の創造主の神の摂理、永遠の計画と配慮による。

ダニエルは、「神は季節と時を変え、王を廃し、王を立て、知者には知恵を、理性のある者には

知識を授けられ」、「いと高き方が人間の国を支配し、これをみこころにかなう者に与え、

また人間の中の最もへりくだった者をその上に立てることを、生ける者が知るためである」

(2:21、4:17)と述べている。

歴史は、無意味で無秩序なものではなく、神の意志の下に展開する。「二羽の雀は一アサリオンで

売っているでしょう。

しかし、そんな雀の一羽でも、あなたがたの父のお許しなしには地に落ちることはありません。

また、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています」(マタイ10:29~30)と、イエスが

言っておられる通りである。

人間は、大国興亡の歴史に埋没する脇役ではなく、諸国家こそ、歴史の流れに飲み込まれて名も

忘れられる(5~6節)。

神は、正義と公正をもって審判し(4、7、8、16節)、愛する者のために、「わたしはあなたがたのために

立てている計画をよく知っている・・・それはわざわいではなくて、平安を与える計画であり、

あなたがたに将来と希望を与えるためのもの」(エレミヤ29:11~12)とある。

エジプトに売り飛ばされたヨセフもそれを経験した(創世記45:4~8)。

 《主こそが苦しむ者の砦であり》世界をさばく「いと高き方」(2節)は、小さい者を軽んじることはない。

「主があなたがたを恋い慕って、あなたがたを選ばれたのは、あなたがたがどの民よりも数が多かったからではない。

事実、あなたがたは、すべての国々の民のうちで最も数が少なかった」(申命記7:7)とある。

神は「主は虐げられた者の砦、苦しみのときの砦」であり、「あなたを求める者をあなたはお見捨てに

なりませんでした」(9~10節)と、過去の経験を語り、「血に報いる方(神)は、彼らを心に留め、

貧しい者の叫びをお忘れにならない」(12節)ことを思い起こす。

 神は、世界の興亡と人生の変転の中に、厳然として正邪の審判を行い、黒白の相違を明らかになされる。

「主はとこしえに御座に着き、さばきのために王座を堅く立てられた。主は義によって世界をさばき、

公正をもってもろもろの国民をさばかれる」(7~8節)。

神は世界の歴史を通してご自分の義なることを示しておられるだけではない。

「主は虐げられた者の砦、苦しみのときの砦」なので(9節、参照詩篇46:1)、「御名を知る者は

あなたに拠り頼みます。

主よ、あなたを求める者を、あなたはお見捨てになりませんでした。」(10節)と証しする。

 《悩む者の望みは滅びない》詩人は今、危機に立たされ、「主よ、私をあわれんでください。

私を憎む者から来る私の苦しみをご覧ください。

死の門から私を引き上げてくださる方よ。」(13節)と神に訴えて祈る。

それは彼の救いに止まらず、「私は、あなたのすべての誉れを語り告げるため、娘シオンの城門で、

あなたの救いに歓声をあげ」(14節)て神をほめたたえ、神の義の救いを証しするためである。

神は、歴史を通して正義を行われ、「悪しき者はよみに帰って行く。神を忘れるあらゆる国々も。

貧しい者は決して忘れられることがなく、苦しむ者の望みは永遠に失せることがない。」(17~18節)。

 それを確信し、詩人は改めて神に訴える。「主よ、彼らに恐れを起こさせ、国々に思い知らせてください。

自らが人間にすぎないことを。セラ」(20節)と。「有るが如きに見えて、実は無に等しきものは人なり、

無きが如くに見えて実は最も確実なる実在は神なり」(内村鑑三)との言葉を、改めて思い返す。